慈恩寺(じおんじ)はさいたま市岩槻区にある天台宗の古刹です。華林山最上院ともいい、天長元年(824)に慈覚大師(円仁)によって開かれたと伝えられています。
江戸時代には徳川家康から寺領100石を拝領し、坂東三十三観音霊場の第12番札所でもあることから、今も参拝や観光に訪れる人で賑わいます。本尊は千手観世音菩薩です。
玄奘三蔵の霊骨——その正確な経緯
慈恩寺がもっとも知られているのは、西遊記で名高い三蔵法師こと玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)の霊骨を納めた十三重塔があることです。
この経緯は、年号を取り違えて書かれていることが非常に多いので、公式サイトの記述に沿って正確に整理します。
- 昭和17年(1942年)12月:南京を占領していた日本軍が、中華門外で稲荷神社建立のため丘を整地中に石棺を発見。石棺には、宋・天聖5年(1027)に三蔵法師の頂骨が演化大師可政により長安から南京にもたらされた旨の記載があり、日中両国の専門家の調査で玄奘三蔵の頂骨と確認されました
- 昭和18年:頂骨を南京政府に還付
- 昭和19年(1944年):南京玄武山の玄奘塔が完成。その式典の際に分骨され、日本仏教徒代表・倉持秀峰氏に手渡されます
- 来日後、当初は東京・芝の増上寺に安置 → 空襲を避けて一時、蕨市の三学院に仮安置(倉持会長の住職寺)→ さらに疎開先として昭和19年12月、慈恩寺に仮奉安
- 昭和21年12月:蒋介石主席の意向により返還不要・顕彰の地と定まり、霊骨塔の建設が正式決定
- 昭和24年:建塔工事開始/昭和25年(1950年)2月:礎石据え・納骨式
- 昭和28年(1953年)5月:落慶式
- 昭和30年に台湾(中華民国仏教会)へ分骨、昭和55年11月に薬師寺へ分骨(昭和56年引渡し)
つまり発見は1942年、慈恩寺への奉安は1944年12月、納骨式は1950年、落慶は1953年です。「1944年に南京で発見された」「1950年代に慈恩寺に奉安された」という記述は、どちらも正確ではありません。
塔は「十三重六十尺の花崗岩の石組」。東武鉄道の根津氏の寄進によるものです。
興味深いのは、霊骨が日本国内で辿った道筋です。増上寺(東京)→ 三学院(蕨市)→ 慈恩寺(岩槻)。蕨市の三学院も埼玉の寺院で、戦時の疎開がこの霊骨を埼玉へ運び込んだという経緯になります。
玄奘塔は本堂から離れています
実務的な注意点です。玄奘塔は本堂とは別の場所にあります。さいたま市の観光公式は「玄奘塔 直線距離 0.4km」と明記しており、独立したスポットとして扱われています。
本堂に参拝したら、そのまま塔まで移動する必要があります。徒歩でも行ける距離ですが、車で移動する場合は塔側の駐車場の有無が公表されていないため、事前に確認しておくとよいでしょう。
千手観世音菩薩の御開帳は終了しています
令和6年(2024年)、開山1200年を記念して千手観世音菩薩の御開帳が行われました。
- 期間:2024年3月20日〜9月23日
- 拝観料:無料。平日9:00〜15:00/土日祝9:00〜16:00
- 本堂奥の二十八部衆28体を初めて前面展示
この御開帳はすでに終了しています。しかも「大嶋住職の在職中はもう展示されることはない」とされており、きわめて貴重な機会だったことになります。「御開帳中」と書いている情報を見かけたら、それは2024年の古い記事です。
年中行事
- 1月1日〜3日 初詣/1月15日 お焚き上げ
- 2月5日 玄奘忌
- 4月8日 花まつり
- 5月5日 玄奘祭
- 8月9日・10日 四万六千日(夏祭り・盆踊り奉納)
- 11月16日・17日 秋大祭(上院権現の法要)
2月5日の玄奘忌と5月5日の玄奘祭は、この寺ならではの行事です。
参拝の実務
- 拝観時間:8:00〜17:00(さいたま市観光公式)
- 納経所(御朱印):8:30〜16:30(坂東三十三観音公式)
- 駐車場:あり・無料
- 拝観料:記載なし(通常は無料)
同じ日に寄れる近くのスポット
岩槻は人形と城下町の土地です。慈恩寺を軸に組み立てられます。
- 岩槻城址公園:岩槻城の跡。桜の名所で、八ツ橋と黒門
- 岩槻人形博物館(岩槻区本町):日本初の人形専門の公立博物館
- 岩槻大師 彌勒密寺:関東三十六不動霊場31番。慈恩寺と同じ岩槻区内
- 久伊豆神社(岩槻区宮町):「クイズ神社」として知られるのはこちらの久伊豆神社です(越谷の同名社ではありません)
- 三学院(蕨市):玄奘霊骨が一時仮安置された寺。この物語を辿るなら
所在地・お問い合わせ
- 所在地:埼玉県さいたま市岩槻区慈恩寺139
- 電話:048-794-1354
- 公式サイト:http://www.jionji.com/ ※httpsには対応していません
- アクセス:東武アーバンパークライン(野田線)「豊春駅」から徒歩約25分/「東岩槻駅」から徒歩約15分
- 車:東北自動車道「岩槻」ICより約15分。駐車場あり(無料)
- 拝観時間:8:00〜17:00/納経 8:30〜16:30
※御朱印の料金、玄奘塔までの徒歩所要時間、玄奘塔側の駐車場、年末年始の開門時間については公表情報がありません。事前にお問い合わせください。
慈恩寺の情報
こちらは慈恩寺の基本情報です。実際の情報と異なる可能性がありますので、詳しくは公式サイトなどでご確認ください。
| 名称 | 慈恩寺 |
| 読み方 | じおんじ |
| 所在地 | 埼玉県さいたま市岩槻区慈恩寺139 |
| 電話番号 | 048-794-1354 |
| 営業時間 | 8:00〜17:00 |
| 定休日 | なし |
| アクセス | 電車・最寄駅 ・東武野田線「豊春駅」下車 徒歩約25分 ・東武野田線「東岩槻駅」下車 徒歩約15分 車でのアクセス 東北自動車道「岩槻」ICより約15分 048-794-1354 |
| 駐車場 | 公式 | 慈恩寺のオフィシャル(公式)サイト |
| バリアフリー | |
| 備考 | 【訂正】旧記事は玄奘霊骨の経緯を書いていませんでしたが、年号を間違えて書いている記事が世の中に多いので、公式サイトの記述に沿って正確に整理しました。正しくは、発見=昭和17年(1942年)12月、南京玄武山の玄奘塔完成・分骨・慈恩寺への仮奉安=昭和19年(1944年)、建塔工事開始=昭和24年、礎石据え・納骨式=昭和25年(1950年)2月、落慶式=昭和28年(1953年)5月。「1944年に南京で発見」「1950年代に慈恩寺に奉安」はいずれも誤りです。/宗派は天台宗です。/公式サイト http://www.jionji.com/ は生存していますが HTTPS非対応(httpsは接続リセット)。リンクはhttpで書く必要があります。/玄奘塔は本堂と別地点で、さいたま市観光公式が「直線距離0.4km」と明記。徒歩所要時間は出典がないため書いていません。/開山1200年記念の千手観世音菩薩の御開帳(2024年3/20〜9/23、無料)はすでに終了しています。「御開帳中」と書いている情報があれば古いので注意。/御朱印の料金は不明(坂東公式の納経8:30〜16:30が目安)。/初詣は公式が「1月1日〜3日 初詣」と記すのみで、年末年始の開門時間・混雑・交通規制・臨時駐車場の記載が一切ありません。要電話確認(048-794-1354)。/玄奘塔側の駐車場の有無・台数も不明。 |


